目 次
- 1.マウスガードって、どういうものですか?
- 2.マウスガードはいつ頃から使われていますか?
- 3.どうしてマウスガードをしなければならないのですか?
- 4.どんなスポーツをする時に、マウスガードをつけたらいいのでしょうか?
- 5.野球のボールが当たって、一度歯を折ったことがあります。野球ではマウスガードの着用が義務付けられていませんが、マウスガードをしたほうがいいでしょうか?
- 6.マウスガードには脳震盪の予防効果があるって聞きましたが、本当ですか?
- 7.マウスガードにも色々な種類があると聞きましたが?
- 8.カスタムメイドマウスガードのことを詳しく教えてください。
- 9.既製のマウスガードを購入する際に気をつけるポイントは?
- 10.既製品のマウスガードの調整の仕方を教えてください。
- 11.既製マウスガードの調整が上手く行きません。どうしたらいいですか?
- 12.マウスガードの手入れの仕方はどのようにすればいいですか?
- 13.マウスガードの保管方法で気をつける点は?
- 14.スポーツ中に歯が欠けてしまった場合の救急処置はどのようにすればよいですか?
- 15.スポーツ中に万一歯が抜け落ちてしまった場合の救急処置はどのようにすればよいですか?
- 16.歯を食いしばった時には、どれくらいの力が歯にかかっているのですか?
- 17.歯をグッと食いしばると、全身の筋力がアップするって聞きましたが、本当ですか?
- 18.マウスガードのことをもっと詳しく知りたいのですが?
16.歯を食いしばった時には、どれくらいの力が歯にかかっているのですか?
健康な成人男性( 20 − 30 歳) 42 名を対象に、かみしめ時に奥歯(下顎第一大臼歯)にかかる力(咬合力)を測定した研究によると、最小では 27.5kg 、最大では 100kg もの値を記録し、その平均は 59kg でした。その後、前歯や犬歯の咬合力も測定されています。 20 歳代の成人男性 150 名の右側前歯、犬歯および奥歯の咬合力はそれぞれ 15.66kg 、 27.74kg 、 66.90kg と記録されています。これらのデータからも、歯を食いしばった時には、自分自身の体重に匹敵するくらい大きな力が奥歯にかかっていることが分かります。ちなみに普段の食事の際に奥歯にかかっている力(咀嚼力)は最大咬合力の 2 分の 1 から 4 分の 1 と小さく、およそ 10 − 20kg 程度であるとされています。
【参考】
- 咀嚼の話.日本歯科評論社、東京、 1983 年.
- 新歯学大事典.永末書店、京都、 1985 年.
- 臨床咬合学事典.医歯薬出版、東京、 1997 年.
17.歯をグッと食いしばると、全身の筋力がアップするって聞きましたが、本当ですか?
人は重い物を持ったり、持ち上げたりしようとすると自然に食いしばっていることが多いと思います。このように日常生活における色々な労作時や様々なスポーツ活動中に歯を食いしばって頑張る癖のある日本人の割合は約 6割(10人に6人ぐらいの割合)と言われています。
歯の食いしばり効果に関する研究結果によれば、全身の筋力を瞬間的に増強させることがわかっています。
もう一つの効果は、この全身の筋肉を緊張させることによって関節が固定されることです。関節が固定されると体の安全につながりますから、しっかり力を出すことができるということです。
ただし、一方で早い動きを必要とする場合には食いしばりはマイナス効果になる可能性があります。
【参考】
- 咀嚼運動の生理学.医歯薬出版、東京、 1998 年.
- スポーツ歯学の臨床.医学情報社、東京、 1998 年.
- 口腔の生理から?を解く.デンタルダイヤモンド社、東京、 2007 年.
18.マウスガードのことをもっと詳しく知りたいのですが?
マウスガードについては「かかりつけ」の歯科医院で歯科医師や歯科衛生士に訊いてみて下さい。また、マウスガードを含めてスポーツ歯科医学を専門的に研究している学術研究団体として、日本スポーツ歯科医学会があります。この日本スポーツ歯科医学会では、マウスガード及びスポーツ歯学のスペシャリストであるスポーツ歯科認定医の養成に力を入れています。スポーツ歯科認定医を取得するためには、一定の診療研鑽を積んだ上で、学会が定めたスポーツ歯科医学の研修カリキュラムを履修して、認定医審査試験に合格することが必要です。一度合格した後も5年毎の更新審査が義務付けられています。
マウスガードのことなら、是非お近くのスポーツ歯科認定医の資格を持っている歯科医師にご相談下さい。詳しくは学会 HP ( http://wwwsoc.nii.ac.jp/jasd/ )をご覧になって下さい。
日本スポーツ歯科医学会・理事長 明海大学・学長 | 安井利一 |