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消費者態度指数から読み解く若者消費の3つのカギ クルマ離れも解消か

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こんにちは。フォーカスマーケティングの蛭川速です。宣伝会議で「データ分析力養成講座」の講師をしています。
 
2020年は、コロナ禍による消費低迷が大きなテーマでした。緊急事態宣言が4月に発令され、飲食店をはじめほとんどすべての業種の経済活動がストップしました。政府による外出自粛要請によって生活者の消費行動は減衰し、特別定額給付金などの施策が展開されましたが、消費実態の冷え込みが深刻化しています。Go Toキャンペーンによって戻りつつあった消費行動も11月中旬以降の第三波によって先行きが見通せない状況です。
 
このような状況の中、企業のマーケターはどうすれば売上回復の手がかりを掴むことができるのでしょうか。本稿では、「家計調査」や「消費者態度指数」などの統計データから見えてきた、注目すべき「コロナ禍における若者の消費傾向」を読み解きます。

【前回記事】「コロナ禍でも20代世帯の消費はプラス成長 お金の使い道は、『食料・クルマ・腕時計』」はこちら

若者の消費増加傾向は続くのか

前回の記事からも分かるとおり、「家計調査」は20代世帯がアフターコロナの消費を牽引する期待を感じさせてくれました。これから先もこの消費傾向は続いていくのでしょうか。6カ月先の家計の懐具合を調査している「消費者態度指数」を見てみましょう。

年代別消費者態度指数(2020年)
出所/内閣府「消費動向調査」より筆者作成

表は2020年の消費者態度指数を世帯主の年代別にみたものです。2人以上世帯、単身世帯ともに29歳以下の消費者態度指数が高いことが分かります。6月以降、他の年代が20~30ポイント前半を推移している中で、20代は30ポイント後半を示しています。現時点の消費実態だけでなく今後の消費状況についても前向きな状況が、20代若者に見られました。

では具体的にどのような分野の支出が増加するのでしょうか。以下の図表に、博報堂生活総研の「生活定点」から20代若者の「今後(も)お金をかけたいもの」をピックアップしてみました。上位3項目は、「貯金」「旅行」「趣味」が占めています。ついで美容、外出着など自分のための消費が目立ちます。2020年調査は6月24日~7月31日に実施されていますので、コロナ禍真っ只中です。

2018年と比較するとコロナ禍による意識変化と考えることができます。2018年との比較で大きく増えている項目をみると、男性は「美容」「装飾品」「ファッション小物」が2桁増です。前回の記事で、「家計調査」から見る腕時計消費を紹介しましたが、これが裏付けられた結果といえます。一方の女性では、「美容」「内装・インテリア」「個人的なプレゼント」「自分消費」「おうち時間充実」の傾向が見て取れます。

20代若者の「今後(も)お金をかけたいもの」。
出所/博報堂生活総研「生活定点」より筆者作成

アフターコロナの若者消費のカギは?

以上の統計調査からアフターコロナの若者消費の傾向として、以下3点が挙げられます。

①若者クルマ離れ解消
②自分磨き消費
③生活充実消費

「若者のクルマ離れ」と言われて久しいですが、コロナによってその効用が見直されつつあるのではないかと想定されます。他者と触れ合うことのない空間として、移動手段だけでなくコミュニケーションの場としても再認識されるのではないかと考えます。バブル時代のような高級車、ブランド志向ではなく、購入重視点は機能軸にあります。特に、背の高い軽自動車(ミニバン)の売れ行きが好調で、家族で気軽に移動できる車種の需要が高まっています。自動運転車の普及に伴って若年世代が自動車需要を引っ張る状況も期待できます。

自分磨き消費は、健康や美容に対する意識の向上です。統計調査の傾向から、男性は筋肉、女性はスタイルを追求するために食生活改善、エステやメイクに対する需要が期待できます。リモートワークの進展に伴い男女ともに肌ケアに興味が高まることも想定できます。

コロナ禍によってインドア生活の楽しみも一定数残存すると考えられます。居心地の良い空間や暮らしやすさのための内装・インテリア消費や、装飾品需要も今後のキーワードとなるでしょう。

長く続いたデフレ経済によって若者消費が懸念されていましたが、コロナ禍という負の環境変化によって図らずも若者の消費が喚起されるという状況が見えてきました。元来、年長者は物事に慎重なものです。コロナ禍が一刻も早く明けて若者が消費を牽引する健全な姿に回帰する世界が戻ってくることを願ってやみません。

蛭川 速氏(フォーカスマーケティング 代表取締役)

大学卒業後、地方銀行を経てマーケティング専門のコンサルティング会社へ勤務。以来18年間、商品企画や販売促進などマーケティング支援を行う。2012年より現職。「マーケティングは仮説設定がすべて」が信条。定量データから戦略仮説を見出す手法を考案。著書に『社内外に眠るデータをどう生かすか~データに意味を見出す着眼点~』(宣伝会議)『基本がわかる 実践できる マーケティングの基本教科』(日本能率協会マネジメントセンター)『よくわかるExcelデータ分析入門』(富士通オフィス機器)がある。

 

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