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チームビルディング需要が国内企業へも波及

社員側からのチームビルディングの要望高まる
旅行は有効性の高いシチュエーション

091215_mice_01.jpg 高い目的意識を持ちながらひとつの目標に向かって社員が一丸となって邁進する。この不景気下において人材を重視する企業が増える中、注目度が高まっているのがチームビルディングだ。宿泊を伴い広いミーティングルームや屋外などで身体を動かすプログラムもあり、観光旅行以上に懇親の効果を上げることができるとあって、社員旅行に組み込むことに興味を示す企業も多い。チームビルディングと旅行のマッチングの可能性を探る。



チームビルディングとは? 「自分のために」と社員が要望

091215_mice_02.jpg  チームビルディングはそもそも、社内で日常的に行なわれることにもその要素が含まれている。職場の雰囲気を良くし、潤滑に、かつ高いモチベーションをもって仕事ができるようにしていること、例えば朝礼での目標掲揚や報告会などにはじまり、運動会や新年会、忘年会といった懇親会を開いたり、年始にキックオフイベントをするのもそのひとつだ。だが、これをもっと効率よく、効果を実感するために専用プログラムを導入する企業が増えている。

 こうしたプログラムを提供するチームビルディングジャパン(TBJ)代表取締役の河村甚氏によると、以前は欧米資本の企業による利用が主だったが、近年は国内企業の利用が目立って増えている。社内イベントの一環として、あるいは半日のセミナーという形で取り入れるケースが多く、また、恒例行事の社員旅行をチームビルディングに代える企業もあるという。

 褒賞の意味もある社員旅行をチームビルディングプログラムに代えるというのは、実は社員側からの要望でもある。近年ではただ職場の和をつくるための飲み会や観光旅行を敬遠する向きもあり、仕事上のつきあいで参加するイベントならむしろはっきりと自分のためになることがわかるものが望まれている。この不景気のもと、社員の意識もだいぶ違ってきているのだ。

 だが、「チームビルディングプログラムはこうしたイベントと併せて受けるのがより効果が出やすい」と河村氏はいう。忘年会やキックオフなど社員全員が参加するイベントの前にワークショップ式のプログラムを受けてから飲み会に入っていくと、互いのコミュニケーションがとりやすくなり、相互理解を深めることに大きく貢献する。そのやり方は企業やその部署の現況と望む状態によって異なり、事前にヒアリングすることでカスタマイズするという。ただ講義を聞くだけではなく、体験型のプログラムなので納得して身につきやすいのが利点のひとつである。


旅行との相性は抜群、一石二鳥をねらえるチャンス

091215_mice_03.jpg  さらにチームビルディングが効果を発揮するのが、旅先だ。なにも遠くに行く必要はなく、森の中や芝生など、広場があるところで実施することが可能だが、普段とは違う環境でやることに意味がある。いつもと違う場所では無意識だが緊張感や不安感があり、職場の仲間に対する親近感をより掻き立てる。旅先のちょっとした興奮とわくわく感から、いつもと違う発想が生まれるという効果もある。もちろん、旅先の思い出として心に残りやすく、職場に戻ってからも効果が長続きするのも利点のひとつである。

 たとえばキックオフイベントなどを海外で開催する場合、社長の目標掲揚で出てくるキーワードを使ったプログラムをつくり、体験を通してその言葉が「腑に落ちる」までしっかり理解させる。身体を動かすプログラムが多いので、屋外のスペースをある程度使え、また雨天にそなえバンケットルームがある場所ならどこでもいいという。ホテルなどが提供するチームビルディングプログラムもあるが、やはりその企業向けにカスタマイズされたものが望ましく、効果の度合いによってその時間も違ってくる。長いものでも2泊あればよく、東南アジアなど近場ではあと1泊を足して観光にあてるとより効果的だ。

 TBJではこれまでにグアムで行なわれた数百人規模のイベントにプログラムを提供したほか、北海道のリゾートでログハウスを一軒借り上げて2日間にわたる研修を実施したり、夏にスキー場を借りたこともある。半日を研修、残りの半日を観光にあてるといった短いスケジュールのものもあり、それでも社内の会議室で受ける研修とはまったく違う大きな効果が目に見えてわかるため、毎年の恒例行事としてチームビルディングを取り入れる企業もある。

 同社での実績によれば、研修が可能な人数は5人のエグゼクティブから400人の社員参加という大規模なものまでさまざま。平均は30人から50人だといい、行き先、人数、目的に応じてプログラムを構築していく。準備期間は半年前くらいから2週間程度と、これも顧客の要望によってさまざまだ。  社員へのインセンティブである観光旅行と研修をあわせて行なうことでより大きな効果を生むとあって、チームビルディングはまさに一石二鳥の現地アクティビティといえそうだ。


専門特化することが大切、まずは体験してその利点を知って

091215_mice_04.jpg  このところ旅行会社からのTBJへの問いあわせに、顧客からチームビルディングを取り入れた研修旅行を希望され、ウェブサイトなどで調べて同社へたどりつくというケースが多いという。先に顧客から提案をされる形では担当者が「チームビルディング」自体をよく知らず、ビジネスチャンスをいかせないこともあるだろう。方法や期間が多岐にわたり、あらゆる場所で行なわれるさまざまなイベントに付加価値をつけることができるだけに、MICEを取り扱う企業の中でもチームビルディングに専門特化した担当者やセクションがあるのも強みとなりそうだ。

 河村氏は「実際に一度研修を受けてみるとその内容や効果を実感できる」とし、企業の担当者に一度体験してもらうのが望ましく、そうした機会を同社でも増やしていきたいとのこと。同社の開催する1日の“お試し”程度の公開式の研修が約3ヶ月に1度あるが、これだけでも十分効果がわかるというので、参加してみてもいいかもしれない。

 チームビルディングの利点を知れば、旅行の利点を引き出し拡大することができる。旅行業にあって多様な知識と業務をこなすことを要求されるMICEにとって、「チームビルディング」多くのシーンに対応できる新たなキーワードとなるに違いない。


取材:岩佐史絵